​1st Prize 新たな生活を求めて 

In Search of a New Life Photo by Yannis Behrakis / Reuters

審査委員特別賞

モンゴル

​イーグルハンターの少女

Photo by

エリック・ニーランダー

Erik Nylander  

ボール・ダメリ・ショカン(13歳)は、モンゴルで鷹狩を行う数少ないカザフ民族の少女だ。アルタイ山脈の西側で、遊牧民の家族と家畜とともに年8回、場所を移動して暮らしている。ボールは男の子のいない家庭に次女として生まれ、幼い頃から男仕事を任されてきた。動物の世話をするほかに、父と祖父の鷹の世話を手伝い、その魅力に取りつかれたが、鷹を扱う「鷹匠」は男社会の伝統だったため、自分ができるとは思っていなかった。しかし、2歳年上の少女、アイショルパン・ヌルガイフが世界最大の鷹狩大会に出場して優勝し、一躍有名になるのを見て、ボールも鷹狩を始めるようになった。

2017年3月8日 場所はすべてモンゴル、アルタイ山脈 

時に-40度以下になる寒さの中、1キロのイヌワシを腕に抱えて運ぶのはきつい仕事だ。依然として多くの男性が女性に狩りは難しいと考えている。女性はこれまで通り、家庭や子どもの面倒を見るべきだと言う者もいる。しかし、昔に比べると高い身体能力や強靭な精神力を持つ少女が増えてきた。ボールは最近初めて自分の鷹を手に入れ、自分の指示で狩りをするようになり、日々訓練をしている。ぴったり息が合うようになるまでには数年の練習が必要だ。主な獲物はキツネとウサギだが、獲物を捕らえる鷹の大きな爪と鋭いくちばしは、人間にも大きなダメージを与えることができる。ボールは、「どんなことができるかわかっていても、私の鷹を怖いと思ったことはありません。私たちはとても特別な信頼の絆で結ばれています」と言う。2017年3月6日

冬は新雪の中で簡単に獲物を見つけることができる。鷹狩は、カザフ民族にとって食料を得るための狩りではない。毛皮を手に入れ、暖かい服を作るためだ。しかし、いまだにカザフ民族が狩りをするのは、何と言っても誇り高い伝統のためだ。狩りは集団でおこなうことが多く、一人が山の麓で馬を走らせ、音を立てながら獲物を怖がらせる。獲物が隠れ場所から出てくると、山の上にいるハンターたちが上から鷹を飛ばし、獲物を攻撃する。2017年3月22日

モンゴルのカザフ民族にとって、鷹は神聖な動物だ。鷹は7~10年ほど一緒に暮らしたあと、持ち主によって自然に帰され、生涯の残り半分を自由に生きる。自分の鷹を手に入れるには、3つの方法がある。ひとつは、鷹が飛べるようになる前に巣から盗む方法。しかし巣はたいてい山の非常に険しい場所にある。一部の家族は、この方法だけがフェアで、鷹を手に入れるハンターの勇気の証明だと考えている。他の方法は、成長した野生の鷹を罠でとらえるか、誰かが捕まえた鷹を買い取る、というものだ。ボールは、鷹狩を引退した祖父から鷹を譲り受けた。ショカン家は、ウルギーから6時間ほどのダヤン地域に冬用の家を持っている。隣人はほとんどなく、隣の家ははるか遠くだ。太陽光パネルでカーバッテリーを充電して電気を付けたり、毎日1時間インドのソープオペラを見たりする。2017年3月5日

ボールの家族は、両親と3人の姉妹、弟、祖父だ。2時間離れた村の学校に通い、平日は親戚の家に寝泊まりしている。ボールは、いつか鷹匠のスキルで有名になれることを期待している。そうすれば憧れのアイショルパン・ヌルガイフのように世界中を旅できるだからだ。アイショルパンは、世界初の女性ハンターとしての彼女を追ったドキュメンタリーに出演したばかりで、モンゴル全土のアイドル、そして国のシンボル的存在になっている。ボールのベッドの隣では、夜の間、ボールの鷹が暖かく敵のいない場所で眠る。鷹は目が見えると逃げてしまうため、フードをかぶせて目隠しする。2017年3月7日

ボールの父親、セムセル・ショカンは、14歳の時に父から鷹狩を教わった。それ以降何年にもわたって、10羽の鷹を所有してきた。セムセルは、女の子が狩りをするようになったのはいいことだと考えている。狩りの様子を実際に見て学ぶために、ボールはまだ数回しか狩りに同行していないが、数か月のうちには自分の力で狩りができるようになると期待している。セムセルは、「女の子全員が鷹匠になれるわけではありません。鷹匠になるには力と強い情熱が必要です。ボールには確かにその両方があります」と話す。2017年3月9日

ショカン家の冬の家は、どことなくシュールな西洋の絵や写真にあふれたカラフルな壁紙が貼られている。2017年3月8日

モンゴル西部に残る250人の鷹匠のうち、何人が女性なのか、記録はない。3人と言う人もいれば、15人と言う人もいる。わかっているのは、とても少ないということだけだ。「5~6年したら、一人前の鷹匠になれると思います。でも、いつまで続けられるかはわかりません。結婚や、勉強のために引っ越さなければいけなくなったら? その時狩りを続けられるかどうかわかりません」とボールは言う。2017年2月20日